AGA治療のやめどき判断ガイド|副作用・効果・費用から考える中断基準を医師が解説
AGA(男性型脱毛症)の治療を始めたものの、「いつまで続ければいいのか」「副作用が気になる」「費用の負担が大きい」と悩んでいる方は少なくありません。この記事では、AGA治療のやめどきをどう判断すればよいのか、治療を中断するとどうなるのか、副作用のリスクはどの程度なのかについて、医師監修のもと詳しく解説します。
【この記事のポイント】
✓ AGA治療をやめるとどうなるのか(治療中断後のタイムライン)
✓ やめどきを判断する3つの基準(効果・副作用・費用)
✓ 各薬剤(フィナステリド、デュタステリド、ミノキシジル)の副作用とリスク
✓ 段階的に治療を減らす方法と注意点
✓ 治療中断後に起こりうる副作用(PFS)の現状
目次
AGA治療をやめるとどうなる?中断後の変化
AGA治療を中断すると、薬の効果がなくなり、再び脱毛が進行します。これは「リバウンド」と呼ばれる現象で、多くの場合、治療前の状態に戻ってしまいます。ただし、リバウンドのスピードや程度は個人差があり、使用していた薬剤の種類によっても異なります。
治療中断後の毛髪変化のタイムライン(1〜6ヶ月)
以下は、フィナステリドやデュタステリドを中断した場合の一般的な変化の目安です。
【中断後1〜2ヶ月】
まだ体内に薬の成分が残っているため、大きな変化は見られないことが多いです。ただし、一部の方では抜け毛が増え始めることがあります。
【中断後3〜4ヶ月】
薬の効果が完全に消失し、抜け毛が明らかに増加します。髪のボリューム感が減り、治療前の状態に近づいていきます。
【中断後5〜6ヶ月】
多くの場合、治療前の脱毛状態にほぼ戻ります。治療で得られた効果(発毛・増毛)は失われます。
ミノキシジル外用薬を中断した場合も同様で、中断後2〜4ヶ月で効果が消失することが一般的です。治療を再開すれば再び効果が得られる可能性はありますが、中断期間が長いと脱毛が進行し、以前と同じレベルまで回復しないこともあります。
リバウンド(元の状態への回帰)が起こる理由
AGA治療薬は、脱毛の原因となる男性ホルモン(DHT:ジヒドロテストステロン)の働きを抑えたり、血流を改善して毛根に栄養を届けたりすることで効果を発揮します。しかし、これらは「AGAの進行を止める」ものであり、「AGAを根本的に治す」ものではありません。そのため、薬をやめるとDHTの影響が再び強まり、脱毛が再開してしまうのです。
段階的に減らす(減薬)という選択肢
急に治療を完全にやめるのではなく、医師と相談しながら段階的に薬の量や頻度を減らす方法もあります。例えば、フィナステリドを毎日服用から週3回に減らす、ミノキシジルの濃度を5%から2%に下げるなどの方法です。これにより、急激なリバウンドを和らげられる場合があります。ただし、自己判断での減薬は避け、必ず医師の指導のもとで行ってください。
AGA治療のやめどきを判断する3つの基準
AGA治療をやめるかどうかの判断は、個人の状況によって異なります。以下の3つの視点から、ご自身の状況を整理してみましょう。
①治療効果に満足し、維持フェーズに移行できる場合
治療によって毛髪の状態が改善し、ご自身が「この状態をキープできれば十分」と感じる場合、完全に治療をやめるのではなく、低用量での維持療法に切り替える選択肢があります。例えば、フィナステリドの服用頻度を減らしたり、ミノキシジルを低濃度に変更したりする方法です。ただし、前述のとおり、完全に中断すると再び脱毛が進行する可能性が高いため、医師と相談しながら最適なプランを立てることが重要です。
②副作用が許容範囲を超え、生活の質(QOL)が低下している場合
AGA治療薬には一定の副作用リスクがあります。性機能の低下、肝機能の異常、頭皮のかゆみ、動悸やめまいなど、副作用が日常生活に支障をきたすレベルになった場合は、治療の中断を検討すべきです。軽度の副作用は様子を見ながら継続することもありますが、重度の症状や健康への不安が大きい場合は、無理に続けず、医師に相談してください。
③経済的負担が継続困難になった場合
AGA治療は保険適用外(自費診療)であり、月々の費用は数千円から数万円かかります。長期間の継続が前提となるため、経済的な負担が大きくなることもあります。費用面で継続が難しい場合は、治療の優先順位を見直したり、より安価な治療法(例:外用薬のみに切り替える)を検討したりすることも一つの方法です。
【やめどきチェックリスト】
以下のような状況に当てはまる方は、やめどきを検討してもよいかもしれません。
□ 治療によって髪の状態が改善し、満足できるレベルに達した
□ 副作用(性機能低下、肝機能異常、頭皮刺激など)が強く、日常生活に支障がある
□ 経済的な負担が大きく、継続が困難になった
□ 他の健康上の理由で薬の服用を控えたい(持病、他の薬との併用など)
※いずれの場合も、自己判断で中断せず、必ず医師に相談してください。
フィナステリドの副作用とやめどき判断
フィナステリドとは?どんな働きをする薬?
フィナステリドは、AGA治療で最もよく使われる内服薬の一つです。この薬は、男性ホルモンの一種である「テストステロン」が、脱毛の原因となる「DHT(ジヒドロテストステロン)」に変わるのを防ぐ働きをします。DHTが減ることで、髪の毛が抜けにくくなり、AGAの進行を抑えることができます。具体的には、「5α還元酵素II型」という酵素の働きをブロックすることで、DHTの生成を約70%減少させます[1]。
フィナステリドの主な副作用
フィナステリドの副作用として最も知られているのは、性機能に関するものです。性欲の低下(リビドー減退)、勃起不全(ED)、射精障害などが報告されています。日本皮膚科学会の男性型脱毛症診療ガイドライン2017年版によると、フィナステリド1mg服用による性機能関連副作用の発現頻度は1〜5%未満とされています[1]。興味深いことに、プラセボ(偽薬)を飲んだグループでも同程度の副作用が報告されており、統計的な有意差は認められていません。これは、心理的な要因(「副作用が出るかも」という不安)が影響している可能性を示唆しています。
国内で承認される際に行われた臨床試験では、943例中5例(0.5%)に性機能関連の副作用が報告されました[1]。つまり、多くの方は性機能への影響を感じることなく治療を続けられています。
また、ごく稀ですが、肝機能への影響も報告されています。肝臓の数値(AST、ALT)が上昇することがあるため、定期的な血液検査が推奨されます。特に、肝疾患の既往歴がある方や、お酒をよく飲まれる方は、医師に相談のうえ、慎重に治療を進めることが大切です。
フィナステリドの性機能関連副作用の発現頻度(データで見る)
以下の表は、フィナステリド1mgを服用した場合の副作用発現頻度をまとめたものです。
【フィナステリドの副作用発現頻度】
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副作用の種類 | フィナステリド1mg群 | プラセボ群 | データ出典
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性欲減退(リビドー減退)| 1.1% | 0.7% | 日本皮膚科学会ガイドライン2017[1]
勃起不全(ED) | 0.7% | 0.7% | 日本皮膚科学会ガイドライン2017[1]
射精障害 | 0.8% | 0.3% | 日本皮膚科学会ガイドライン2017[1]
肝機能検査値異常 | 0.2%未満 | – | フィナステリド添付文書[2]
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このように、フィナステリドの性機能関連副作用の発現頻度は比較的低く、プラセボ群と大きな差がないことがわかります。ただし、個人差があるため、気になる症状があれば早めに医師に相談してください。
PFS(ポストフィナステリド症候群)とは何か
PFS(ポストフィナステリド症候群)とは、フィナステリドの服用を中止した後も、性機能障害、精神症状(抑うつ、不安)、認知機能の低下などが持続する状態を指します。欧米では患者からの報告が相次ぎ、2017年にEMA(欧州医薬品庁)が医薬品の添付文書にPFSのリスクを記載するよう推奨しました[3]。
ただし、現時点ではPFSの発現頻度や病態についての大規模な研究は不足しており、因果関係を証明するエビデンスは確立されていません[3]。日本皮膚科学会のガイドラインでも、PFSについては「議論の余地がある」と記載されており、過度な不安を持つ必要はありませんが、治療を始める前に知っておくべき情報の一つです。
フィナステリドをやめるべきタイミング
以下のような場合は、フィナステリドの中断を検討すべきです。
性機能に明らかな影響が出て、日常生活やパートナーとの関係に支障をきたしている場合は、医師に相談し、治療の中断や他の治療法への切り替えを検討してください。また、肝機能検査で異常値が出た場合は、直ちに服用を中止し、医師の指示を仰ぐ必要があります。さらに、治療効果が十分に得られ、満足できる状態になった場合は、完全に中断するのではなく、服用頻度を減らす(例:毎日から週3回へ)などの減薬を試みることもできます。いずれの場合も、自己判断ではなく、必ず医師と相談しながら進めてください。
デュタステリドの副作用とやめどき判断
デュタステリドとは?フィナステリドとの違い
デュタステリドは、フィナステリドと同じくDHTの生成を抑える薬ですが、より広い範囲で効果を発揮します。【修正】フィナステリドが「5α還元酵素II型」のみをブロックするのに対し、デュタステリドは「I型」と「II型」の両方をブロックします[4]。その結果、DHTの生成を約90%以上抑えることができ、フィナステリドよりも強力な効果が期待できます。
デュタステリドの主な副作用
デュタステリドの副作用は、フィナステリドと似ていますが、やや発現頻度が高い傾向があります。性機能に関する副作用(性欲減退、勃起不全、射精障害)が主なもので、国内の臨床試験では、デュタステリド0.5mg服用群で勃起不全が4.3%(プラセボ群3.3%)、性欲減退が3.9%(プラセボ群3.3%)で報告されました[5]。フィナステリドと比較してやや高い傾向がありますが、統計的な有意差は限定的です。
デュタステリドがI型とII型の両方の酵素をブロックするため、理論上は副作用の頻度が高くなる可能性がありますが、実際には個人差が大きく、すべての患者さんで高頻度に発現するわけではありません。
デュタステリドと肝機能障害のリスク
デュタステリドの国内臨床試験(120例)では、肝機能検査値異常(ALT、AST上昇)が2.5%(3例)で報告されました[6]。重篤な肝機能障害の報告は稀ですが、肝疾患の既往歴がある方は定期的な血液検査が推奨されます。お酒をよく飲まれる方や、肝臓に負担がかかりやすい生活習慣の方は、医師に相談のうえ、慎重に治療を進めてください。
デュタステリドの性機能関連副作用(フィナステリドとの比較)
以下の表は、デュタステリドとフィナステリドの副作用発現頻度を比較したものです。
【デュタステリドとフィナステリドの副作用比較】
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副作用の種類 | デュタステリド0.5mg | フィナステリド1mg | プラセボ | データ出典
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勃起不全(ED) | 4.3% | 0.7% | 3.3% | Tsunemi Y, et al., 2015[5]
性欲減退(リビドー減退)| 3.9% | 1.1% | 3.3% | Tsunemi Y, et al., 2015[5]
肝機能検査値異常 | 2.5% | 0.2%未満 | – | ザガーロ添付文書[6]
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デュタステリドをやめるべきタイミング
フィナステリドと同様に、性機能への影響が強く出た場合、肝機能検査で異常が見られた場合は、医師と相談し、治療の見直しを検討してください。また、デュタステリドは体内に長く留まる特徴があり(半減期が長い)、中断後も効果や副作用が続く可能性があります。段階的に減薬する場合も、医師の指導のもとで慎重に進めることが重要です。
ミノキシジルの副作用とやめどき判断
ミノキシジル(内服薬)の副作用
ミノキシジル内服薬とは?
ミノキシジル内服薬(ミノキシジルタブレット、通称「ミノタブ」)は、もともと高血圧の治療薬として開発されました。【修正】血管を広げて血流を改善する作用があり、その結果として毛根に栄養がより多く届くようになり、発毛効果が期待できるとされています。
ミノキシジル内服薬の主な副作用
ミノキシジル内服薬は、血圧を下げる作用があるため、動悸、頻脈、めまい、むくみ、低血圧などの副作用が報告されています。FDA(米国食品医薬品局)は、AGA治療を目的としたミノキシジル内服薬を承認しておらず、動悸、頻脈、めまい、むくみなどの心血管系副作用のリスクを警告しています[7]。日本でもAGA治療への内服は適応外使用(承認された使い方ではない)であり、医師が慎重に判断したうえで処方されるケースがあります。
ミノキシジル内服薬はもともと高血圧治療薬として開発されたため、血圧が正常またはやや低めの方が服用すると、低血圧の症状(立ちくらみ、倦怠感など)が出やすくなります。心臓や血管に持病がある方、血圧の薬を飲んでいる方は、必ず医師に伝えてください。
ミノキシジル内服と心血管系への影響(
ミノキシジル内服薬は血管を拡張する作用があるため、心拍数が増えたり、動悸を感じたりすることがあります。また、体内の水分が溜まりやすくなり、顔や手足のむくみが出ることもあります。重篤な副作用としては、心膜液貯留(心臓の周りに水が溜まる)や心不全のリスクも報告されており、FDA(米国食品医薬品局)は「AGA治療目的での内服は未承認」としています[7]。
そのため、ミノキシジル内服薬を使用する場合は、定期的な血圧測定や心電図検査などのモニタリングが重要です。異常を感じたら、すぐに医師に相談してください。
多毛症(体毛が濃くなる)について
ミノキシジル内服薬を使用すると、頭髪だけでなく、顔や腕、足などの体毛も濃くなることがあります。これは、ミノキシジルが全身の血流を改善するためで、個人差がありますが、多くの方で見られる症状です。多毛症は健康上の問題ではありませんが、外見上の悩みになることがあります。気になる場合は、医師と相談し、用量を減らすか、外用薬への切り替えを検討することもできます。
ミノキシジル内服薬をやめるべきタイミング
動悸やめまいなどの心血管系の症状が強く出た場合、むくみがひどい場合、多毛症が日常生活に支障をきたす場合は、医師に相談し、治療の見直しを検討してください。また、ミノキシジル内服薬は外用薬に比べて副作用のリスクが高いため、「外用薬だけでは効果が不十分」「他に治療法がない」といった場合に限定して使用されるべきです。もし内服薬の使用に不安がある場合は、外用薬への切り替えを相談してみてください。
ミノキシジル(外用薬)の副作用
ミノキシジル外用薬とは?
ミノキシジル外用薬(市販品では「リアップ」など)は、頭皮に直接塗るタイプの治療薬です。内服薬と違い、全身への影響が少ないため、比較的安全性が高いとされています。【修正】濃度は1%、5%などがあり、日本では5%製剤が一般的に使用されています。
ミノキシジル外用薬の主な副作用
ミノキシジル外用薬の副作用として最も多いのは、頭皮のかゆみ、発赤、刺激感などの皮膚症状です。ミノキシジル外用薬(5%製剤)の国内臨床試験では、頭皮のかゆみ、発赤、刺激感などが約6%の患者さんで報告されています[8]。これらの症状は軽度で一時的なことが多く、継続使用で改善するケースがほとんどですが、重度の場合は医師に相談してください。
外用薬に含まれるアルコール成分が刺激の原因となることもあります。敏感肌の方や、アルコールに弱い方は、低濃度の製剤(1%)から始めるか、アルコールフリーの製剤を選ぶこともできます。
ミノキシジル外用薬の頭皮刺激症状(発現頻度)
以下の表は、ミノキシジル外用薬(5%製剤)の副作用発現頻度をまとめたものです。
【ミノキシジル外用薬の副作用発現頻度】
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副作用の種類 | 発現頻度(5%製剤)| データ出典
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頭皮のかゆみ | 約3.5% | リアップX5プラスネオ添付文書[8]
頭皮の発赤・炎症 | 約1.5% | リアップX5プラスネオ添付文書[8]
頭皮の刺激感・ヒリヒリ | 約1% | リアップX5プラスネオ添付文書[8]
フケ・乾燥 | 約0.5% | リアップX5プラスネオ添付文書[8]
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初期脱毛とは何か?なぜ起こるのか?
ミノキシジル外用薬を使い始めると、最初の1〜2ヶ月間、一時的に抜け毛が増えることがあります。これを「初期脱毛」と呼びます。「薬を使い始めたのに抜け毛が増えた!」と驚かれる方も多いですが、これは実は治療が効いている証拠です。
初期脱毛は、休止期(成長が止まっている状態)にあった古い毛髪が、新しく成長を始めた毛髪に押し出されることで起こります。つまり、新しい髪が育ち始めているサインなのです。
初期脱毛の発現頻度と期間(データで見る)
ミノキシジル外用薬の臨床試験では、約10〜20%の患者さんで治療開始後1〜2ヶ月以内に初期脱毛が報告されています[1]。通常、初期脱毛は2〜3ヶ月で自然に改善し、その後発毛効果が現れてきます。
【初期脱毛が起こったときの対処法】
初期脱毛は一時的なものですので、過度に心配せず、治療を継続することが大切です。ただし、以下のような場合は医師に相談してください。
・抜け毛が3ヶ月以上続いている
・抜け毛の量が非常に多く、明らかに薄毛が進行している
・頭皮に痛みやかゆみ、炎症がある
ミノキシジル外用薬をやめるべきタイミング
頭皮のかゆみや炎症が強く、継続使用が困難な場合、アレルギー反応が出た場合は、使用を中止し、医師に相談してください。初期脱毛については、基本的には様子を見ながら継続することが推奨されますが、不安が強い場合は医師に相談して、治療方針を見直すこともできます。
AGA治療中断時の注意事項
妊婦・小児への禁忌と取り扱い注意
フィナステリドとデュタステリドは、妊娠中の女性が服用すると、男性胎児の生殖器に異常をきたす可能性があります[2][6]。そのため、女性(特に妊娠の可能性がある方)や小児(18歳未満)には使用できません。
さらに、これらの薬は皮膚からも吸収されるため、錠剤を割ったり砕いたりして触ることも避けてください。妊娠中の女性やお子さんがいるご家庭では、薬の保管場所にも注意が必要です。
献血制限期間について
フィナステリドやデュタステリドを服用している方は、献血ができません。これは、輸血を受けた妊婦の胎児に影響を与えるリスクを防ぐためです。
日本赤十字社の献血制限指針では、以下のように定められています[9]。
【AGA治療薬の献血制限期間】
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薬剤名 | 献血制限期間 | 理由
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フィナステリド | 服用中および服用中止後1ヶ月間 | 妊婦の胎児への影響を防ぐため
デュタステリド | 服用中および服用中止後6ヶ月間 | 妊婦の胎児への影響を防ぐため(体内に長く留まるため期間が長い)
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もし献血を予定している場合は、事前に医師に相談し、必要な中止期間を確認してください。
個人輸入薬のリスクと健康被害
インターネットなどで海外から個人輸入したAGA治療薬は、以下のようなリスクがあります。
偽造品や粗悪品が混入している可能性があり、有効成分が含まれていなかったり、逆に過剰に含まれていたりすることがあります。また、不衛生な環境で製造された薬は、健康被害を引き起こす恐れがあります。さらに、個人輸入薬で健康被害が起こった場合、国の医薬品副作用被害救済制度の対象外となり、補償を受けることができません。
AGA治療薬は、必ず医師の診察を受け、国内で承認された正規品を処方してもらうようにしてください。
よくある質問(FAQ)
Q1. AGA治療の副作用が出たらすぐにやめるべきですか?
A. 軽度の副作用(初期脱毛、軽い頭皮のかゆみなど)は一時的なことが多く、継続することで改善するケースがあります。ただし、以下のような症状が現れた場合は、直ちに医師に相談し、中断を検討してください。
・性機能障害(勃起不全、性欲減退、射精障害)が日常生活に支障をきたすレベル
・肝機能検査で異常値が出た
・重度の皮膚症状(かぶれ、発疹、強いかゆみ)
・動悸、めまい、息切れなどの心血管系症状
自己判断での中断は避け、必ず専門医の指示を仰ぐことが重要です。
Q2. AGA治療をやめたらすぐに元の状態に戻りますか?
A. フィナステリドやデュタステリドを中断すると、約3〜6ヶ月で治療前の状態に戻ることが一般的です。ミノキシジル外用薬も同様に、中断後2〜4ヶ月で効果が消失します。
急激なリバウンドを避けたい場合は、医師と相談しながら段階的に減薬する方法もあります。例えば、フィナステリドを毎日から週3回に減らす、ミノキシジルの濃度を下げるなどの方法です。
Q3. AGA治療は段階的に減らすことができますか?
A. はい、可能です。医師の指導のもとで、薬の用量や頻度を段階的に減らすことで、急激なリバウンドを軽減できる場合があります。
例えば、フィナステリドを毎日服用から週3回に減らす、ミノキシジルの濃度を5%から2%に下げるなどの方法があります。ただし、自己判断での減薬は効果が不十分になったり、副作用のリスクが高まったりする可能性があるため、必ず医師に相談してください。
Q4. AGA治療の効果に満足したらやめてもいいですか?
A. AGA治療は脱毛の進行を抑制する目的が主であり、治療を完全に中断すると再び脱毛が進行する可能性が高いです。
効果に満足した場合でも、完全にやめるのではなく、維持療法として低用量の継続や、外用薬のみに切り替えるなど、医師と相談しながら最適な方法を選択することをお勧めします。髪の状態を長期的に維持するためには、何らかの形で治療を続けることが一般的です。
Q5. 治療をやめた後、再開することはできますか?
A. はい、再開可能です。ただし、中断期間が長いと脱毛が進行し、再開時に以前と同じ効果が得られない場合があります。
治療を再開する際は、医師の診察を受け、現在の毛髪状態や健康状態を確認したうえで、治療計画を立てることが重要です。中断期間中に脱毛が進行していた場合、元の状態まで回復するのに時間がかかることもあります。
Q6. 初期脱毛が心配です。これは副作用ですか?
A. 初期脱毛は副作用ではなく、治療が効いている証拠です。新しい髪が成長を始めたことで、古い髪が押し出される正常な反応です。
通常、初期脱毛は治療開始後1〜2ヶ月以内に起こり、2〜3ヶ月で自然に改善します。その後、発毛効果が現れてきますので、過度に心配せず、治療を継続することが大切です。ただし、抜け毛が3ヶ月以上続く場合や、明らかに薄毛が進行している場合は、医師に相談してください。
まとめ
AGA治療をいつやめるべきかは、個人の状況によって大きく異なります。治療効果に満足した場合、副作用が許容範囲を超えた場合、経済的負担が大きくなった場合など、さまざまな理由で中断を検討することがあります。
治療を中断すると、3〜6ヶ月で治療前の状態に戻ることが一般的ですが、段階的に減薬することで急激なリバウンドを和らげられる場合もあります。いずれの場合も、自己判断ではなく、必ず医師と相談しながら進めることが重要です。
副作用についても、軽度なものは様子を見ながら継続できることが多いですが、重度の症状や健康への不安が大きい場合は、無理に続けず、治療の見直しを検討してください。AGA治療は長期的な取り組みが必要ですが、ご自身の健康と生活の質を最優先に、無理のない範囲で続けることが大切です。
ご不明な点や不安なことがあれば、遠慮なく医師にご相談ください。
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参考文献
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[1] 日本皮膚科学会, 2017, 「男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン 2017年版」, 日本皮膚科学会雑誌, 127巻13号, p.2763-2777
[2] MSD株式会社, プロペシア錠1mg 添付文書, PMDA医薬品医療機器情報提供ホームページ, https://www.pmda.go.jp/
[3] European Medicines Agency (EMA), 2017, “Finasteride and the risk of persistent sexual dysfunction”, EMA/175280/2017, https://www.ema.europa.eu/en/news/finasteride-risk-persistent-sexual-dysfunction
[4] Clark RV, et al., 2004, “Marked suppression of dihydrotestosterone in men with benign prostatic hyperplasia by dutasteride, a dual 5alpha-reductase inhibitor”, Journal of Clinical Endocrinology & Metabolism, 89(5):2179-2184, DOI:10.1210/jc.2003-030330
[5] Tsunemi Y, et al., 2015, “Phase II/III, multicenter, randomized, double-blind, placebo-controlled study of dutasteride 0.5mg for male pattern hair loss”, Journal of Dermatology, 42(6):640-642, DOI:10.1111/1346-8138.12843
[6] グラクソ・スミスクライン株式会社, ザガーロカプセル0.5mg 添付文書, PMDA医薬品医療機器情報提供ホームページ, https://www.pmda.go.jp/
[7] FDA, 2023, “Minoxidil (Oral Route) – Side Effects”, MedlinePlus Drug Information, National Library of Medicine, https://medlineplus.gov/druginfo/meds/a689003.html
[8] 大正製薬株式会社, リアップX5プラスネオ 添付文書, PMDA医薬品医療機器情報提供ホームページ, https://www.pmda.go.jp/
[9] 日本赤十字社, 2023, 「献血をご遠慮いただく場合(服薬等)」, 日本赤十字社ウェブサイト, https://www.jrc.or.jp/donation/about/refrain/
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